4日目は、熊本県菊池市のきくち未来創造塾修了生2名に、塾に参加した経緯や塾での取り組み、発表したビジネスプラン、さらにその後の進捗なども合わせて、オンラインで講義してもらいました。
・「御所通りで人と地域がつながる空間提供」
まるかファーム 狩野唯氏(きくち未来創造塾1期)
・「井上式林野活用術」
井上青華園 井上致伸氏(きくち未来創造塾3期)
まるかファーム 狩野 唯氏
まるかファームは、築100年以上の2階建て長屋の右半分で営業しています。大学卒業後、建設業に就職して、その後菊池市にUターンして開業しました。その1年後にきくち未来創造塾に参加して、現在はまちのたねラボきくち、という団体の代表をしています。
まるかファームは地域野菜の直売所としてオープンしました。身土不二、土地の旬の ものを食べると元気に過ごせるというこの言葉が好きで、地元の旬をお届けするお店を経営しています。スーパーでは県外野菜が並んでいて、道の駅とか少し遠くに行かないと地元の野菜はなかなか買えません。同時に、「御所通り、なんかいいね」と思ってくれる人を増やしたいです。
私は子供の頃は菊池が大嫌いでした。田舎だし、このままおばあちゃんになって死んでいくのかなあ、と思っていました。でもUターンしてからは、なんかハワイみたいな感じで、自然の中で暮らせることに魅力を感じています。
夫とは同じ会社で出会って結婚したのですが、一緒に退職して菊池に来ました。お店をしたいと考えていて、たまたま今の物件を見つけて、勢いで借りてしまいました。それとは別に住居を空き家バンクで見つけて購入しました。その後妊娠が分かっててんやわんやとなり、1年半くらいはお店の家賃を払ってるだけの状態でした。
お店をオープンして細々と営業を始めましたが、お客さんは近所のおばあさんたちばかりでした。実家が農家なので農業もやりたかったのですが、今はお店に集中していて、田植えや稲刈りなどの時に手伝っています。
塾に入るきっかけは、憧れのインスタグラマーさんがたまたまご近所さんで、その方に塾を紹介していただいたことです。お店を1年ぐらいやったころだったので、何か変わるきっかけになればいいと思いました。当初は他の塾生さんがすごい人ばかりで、寂しい思いもしました。ただ、当時は営業時間も短くて、いろいろ知りたいという気持ちも強かったので、塾には毎回参加するようにしていました。
まるかファームがあるのは御所通りというところで、何百年も前から続く碁盤の目状の歴史ある街並みで、昔は歩くと他の人と肩がぶつかるくらいにぎわっていたそうです。いろいろな名所もあるのですが、今では人通りも少なくなってしまいました。
私が着目した地域課題は、築地に若者が帰ってこないということでした。就職先や住居として選ばれていないのです。御所通りの住民は、多くがお年寄りで、商店街のお店も少なく、空き家・空き店舗などが多いのですが、不動産物件としては出てきません。御所通りを目的に通行する人もあまりいません。企業課題としては、店舗の空きスペースです。当初、通りから商品が見えたほうがいいかと、建物の1階の玄関側だけを使って野菜販売をしていて、店舗の空きスペースを収益にはつなげられていませんでした。空き店舗を探しに来る人もいたのですが、その人と自分の空きスペースとをつなげることもできませんでした。
そこで塾ではプチレンタルスペースを考えました。手ごろな利用料設定で、若い人にはInstagramなどSNSで訴求、地域の人には野菜販売での口コミで集客することを考えました。近隣に駐車場が少ないこと、無農薬野菜だけでは販売品目が不足することなどの課題を考えたり、空きスペースをどのように利用してもらうか、さらに御所通りがすてきな場所に見えてくるような働きかけなども考えて、プランを作成しました。
塾で学んだことについてですが、岩名さんのお話からヒントがたくさん得られました。塾参加中にプランの改善をしたという点では、まず営業時間の拡大です。子どもが当時0歳で保育園に預けていたので10時から13時の営業だったのですが、10時から16時に伸ばしました。それから、お客さんの要望に細かく対応するようにしました。最近のお年寄りは選択肢が幅広いという岩名さんのお話があったからです。詰め放題、量り売り、カットしての販売など、柔軟にしました。また、お茶の種類も増やして、高級なお茶も仕入れました。おばあさんたちは、毎日お茶しか飲まないので、いいお茶が飲みたい、という意見があったからです。きくちで開催されるいろいろな勉強会にも参加するようになりました。
プラン発表後には、飲食店営業許可を取得してカフェを小さく始めました。飲み物中心で、ケーキやパンは扱っていなかったのですが、お客さんの中からパンやお菓子を売らせてほしい、ハンドドリップコーヒーを提供するイベントがしたいなどの要望があり、一緒にやっていくことになりました。高校生のフィールドワーク受け入れや、コラボでマルシェやワークショップを行ったりもしてきました。
レンタルスペースの利用がだんだんと広がって、いろいろな宇イベントが開催されて、いろいろなものが販売されるようになって、子育てママさんや近くで働く人たちなど、客層も広がりました。みんながそれぞれに企画を持ってきてくれて、参加者が新しいお客さんになってくれたりして、広がりを見せています。
<Aグループ>
狩野さんのお話を聞いて、積極的にご縁を作られていて、周囲からも助けてあげたくなるようなそんな素敵な方だなと話していました。狩野さんの魅力があるからみんながここを使いたくなる、そんな環境が作れているんじゃないかっていう話をしていました。
加えて、売上をどう立てておられるのか気になりました。ビジネス環境を低価格で提供してくれるのは市役所とかが多いのかと思うのですが、それを狩野さんがしているのかな、とも思いました。自分も小さく始められたらいいと思いました。
<Bグループ>
こちらのグループでもご縁、人との繋がりがとても際立って見えるという話が出ました。強みとして発信力がある、使えるスペースがあることだと思いました。グループの中で、SNS発信だけでは届かない人にどう届けるかを考えている方もいて、リアルのつながりを大事にして、意図したつながりだけでなく意図しないつながりも大切にしていくことが必要だと思いました。また、いろいろな世代の人が集まって、相乗効果もあると思いました。
井上青華園 井上 致伸氏
父が外路樹などにする木を生産する農家をしており、21歳で親元就農をしました。37歳の時に父が亡くなったため後を受け継いで個人事業主として青華園をスタートし、昨年、きくち未来創造塾の4期生となりました。今年になって、きくち未来創造塾の縁で、同じ塾の内野さんと、さらに塾生の知り合いなどのつてをたどって炭谷さんと出会って、株式会社山木を設立しました。
井上青華園では、樹木をつくっています。なじみがないかもしれませんが、クヌギやコナラなどの苗木を作って販売しています。従業員は現在3名です。菊池の森林の状況は日本全国と同様で、荒廃が進んできています。
熊本は地下水が豊かで水の都と呼ばれているのですが、最近TSMCという大企業が進出してきて、地下水が脅かされるのではないかという問題意識が芽生えてきています。菊池市はその上流にあたり、森林の活用や保全を私の仕事と絡めてどうしていくか、ただ守る、木を植える、ではなく、ビジネスとして活用しないと意味はないと考えています。
井上青華園では最近、山の中から採取したり山の中で育成したりした自然樹形樹木の苗木を販売するという事業が伸びてきています。山林を持っている人から土地を借りることで収入源にしてもらったり、山林の整備を一緒にしたりできるようになるといいと考えて始めた事業です。この自然樹形樹木ですが、全国的に需要はあるのですが、資源が枯渇するような状況にあります。日照量が少ない自然の環境が、生育にはよいのですが、遠い急斜面の山中で育てるよりは、近くの目の届くところで育てる方が効率はよいし品質にもいい影響が出ます。経費もあまり掛かりません。しかし、そんな場所は限られています。
そこで、これらの課題を組み合わせて新たな産業を生み出そうと考えました。私の地区には平らで道が整備されている山林が多く、それを活用するのが理にかなっていますし、下草刈りや間伐なども行って、山林保全、景観維持にもつなげていきたいと考えています。また、ホタルと地下水がフィーチャーされている地域なので独自のブランディングもやりやすいことも含めて、自然樹形樹木を前面に押し出して販売展開を行うことで、山林の荒廃も防げるのではないかと考えました。
隣の山鹿市にあるYAMAGA BASEで塾を受講する機会がありました。その空間を見たときに室内を緑化するというアイディアを思いつきました。YAMAGA BASEさんに提案したところ快諾いただいて、廃校を活用したコミュニティースペースのエントランスに山の中で育った樹木を使って室内緑化を展開しました。地元の新聞にも取り上げてもらい、利用者にも見てもらってそれなりの反響がありました。
SNSを見ると、東京のオフィス街ではこういった室内緑化を行っている企業が多くなってきています。使われている植物は基本的には観葉植物なのですが、日本の山林で育つ植物も決して悪くはないし、室内でも育つのではないか、とYAMAGA BASEで試させていただきました。モミジやアセビなどの日本在来の植物も生育が確認できたので、事業展開の上の大きな一歩になったと思います。
自社の売り上げをいかにして伸ばすか、そしてクライアントの思いをどれだけ形にできるかというのが仕事だと考えています。それをうまく実現する結果として、地域課題が解決できたらいいと思います。そんな思いで株式会社山木を立ち上げました。
これまでは、樹木の苗木を種や挿し木で増やし、公共事業や造園用の注文に合わせて出荷するという流れでしたが、公共事業や造園などの需要が減ってきています。これはひしひしと感じています。自分からブランド化して提案し、販売していかないといけないと思ってはいましたが、生産活動を重視していましたので、ブランド化、販売促進などの企業経営にはなかなか手が出せず、塾で知り合った内野さんが菊池に移住する前に横浜でイベント会社の運営や営業をされていたということで、一緒に面白い仕事ができそうだと感じて、山木を設立しました。内野さんが社長、私が常務という形です。
現在、山木には、作庭や草刈り管理作業、室内緑化などの依頼が来るようになっています。それぞれの強みを活かした会社運営をしていきたいと思っています。私には、経営や営業の能力はないと自覚していて、それができる人と組めましたし、その人が外から来た人というのも魅力的です。今のところ期待以上の成果が出ています。つながりを密にしながら、やりたいこと、できることを、相談しつつ進めています。
法人を立ち上げるというのはリスクがあると思うのですが、理念を共有できて、企業経営について理解し合ったうえであればできると思います。銀行など金融機関や、取引先に対する社会的信用も大きなものがあることを実感しました。
今後は室内緑化を中心とした樹木の新たな活用により、ブランド力を高め山採り樹木等の販売を行う。また、これを通して、都市部や地域の活性化や山林の維持発展に貢献していきたいと考えています。
少し追加ですが、室内緑化の提案では、ChatGPTを活用しています。現在の室内の写真をもとに、室内緑化した事例を画像生成してクライアントに提案する、という形です。
富山でも山林が荒廃してきているという話が出ていました。また、法人化のタイミングは難しいけれども、横浜から移住した塾の同期生と会社を設立することで、都市部の情報も入手して逆に発信もできるのがよいという話も出ました。情報を広く拾っていかないといけないという話もありました。また、AIを活用して提案を作成するという話も、自分ではまたうまく使いこなせないけれども、大切な話だと思いました。