7日目は、なんと未来創造塾4期生3名に、塾での取り組みや発表したビジネスプラン、さらにその後1年ほどでの進捗なども合わせて、5期生に講義してもらいました。
講義のあとには懇談会も設けて、塾生たちもいろいろな話題に花を咲かせていました。
「結の力を集めるクリスタルプロジェクト」
結心堂 代表 中田 ひかる氏
「わがしあそび」
(株)ビッグノーズ 和菓子作家 森松 祐史氏
「花を通じて定着採用への道のり」
ameagua 代表 長谷川 由香里氏
結心堂 代表 中田 ひかる氏
小さいころからアルペンスキーをしていましたが、高校生の時に靭帯を損傷し、けがをさせない人になりたいと思いました。高校卒業後に大阪の大学に進学して鍼灸の資格を取り、卒業後もスキーに関わりたいと考えて札幌の治療院に就職しました。昨年5月に平にUターンし、今年4月に五箇山荘内に結心堂を開業しました。鍼灸とスポーツ科学、東洋医学を利用して、さまざまな疾患に対応できるのが特徴です。
五箇山には結という文化があり、地域住民が協力して合掌造りの屋根の葺き替えなどの作業を行ってきました。採れた野菜を近所に配ったり、子どもたちも近所の家に上がって過ごしたりなど、地域のみんなが家族のようで、私は地域で育ててもらったと感じています。患者さんも家族の一員のように感じて、何とか痛みを取ってあげたいと思って治療しています。
結心堂で行っているクリスタルプロジェクトは、結の力を集めて結晶を育てるという意味で、結心堂の売り上げの一部を地元アスリートの強化育成に活用するプロジェクトです。私もアルペンスキーをやっていたころに地元の指導者の皆さんに手厚く育ててもらいましたし、自分が持っている技術を活用して、地元アスリートの育成に携わりたいと考えました。特に平で人気のあるクロスカントリースキー、アルペンスキー、バレーボールのアスリートを、結心堂を通して地域全体が育成を支援する仕組みをつくっています。
具体的には、これらの3種のスポーツの選手を対象にファンクショナルトレーニング教室を開催しています。また、スポンサー契約・プロジェクト契約も行っていて、地元で活躍している選手に結心堂の宣伝をしてもらう代わりにトレーニングや治療を安価で提供しています。3月には合宿プログラムを開催する予定です。3種のスポーツ選手を対象に、コミュニケーション力も育成したいと考えています。
私の塾でつくったプランは、念仏道場を使った訪問治療でしたが、高齢者が必要性を感じていないという状況で、ビジネスにならないことがわかりました。しかし、高齢者には運動習慣の確保が重要です。ある患者さんから「子どものスポーツ関係で、いろいろなところに行ったものだ」という話を聞いたり、五箇山排球会が全国大会に出場し地域が盛り上がったりなど、地域のスポーツを応援する気持ちが強いことに改めて気づきました。しかし、私が小さい頃は3つのスポーツを並行してする子どもが多かったのですが、最近はスポーツをする子どもが減り、1種しかしない子どもも増えました。
私は、地域のこのような状況から、スポーツ文化の復興が地域の健康志向を高めるのではないか、と考えるようになりました。それがクリスタルプロジェクトを開始した理由です。トレーニング教室に通っている子どもたちが好成績を収めてくれ、地域のスポーツ熱も高まってきたのではないかと思います。今後は、地区に空き校舎ができそうなので、それを借りてスポーツジムと治療院を開設し、多くの住民がスポーツに親しみ、介護施設や病院に頼らない高齢社会の実現に努めていきたいと思います。
(株)ビッグノーズ 和菓子作家 森松 祐史氏
株式会社ビッグノーズは、和菓子の製造販売とアートギャラリーの運営を行っています。地域課題としては、和菓子の手仕事が滅びつつある、ということが挙げられます。和菓子屋では後継者が不足し、店舗数も減少しています。大きな要因は、大量生産された安価なお菓子が選ばれるようになったことです。
一方、自社の課題としては、和菓子への関心を高めるために、販売以外での売り上げを創出すること、地域とのつながりをつくること、子どもたちのアートへの興味関心を高めること、そして私のファンをつくることなどが挙げられます。
このような状況の中で考えたビジネスプランは、ねりきりを使った出張ワークショップです。大量につくられる和菓子にはお餅やどら焼きなどがありますが、和菓子にはねりきりなど工芸的なものもたくさんあって、それを子どもたちと一緒に作ることで子どもたちの創作意欲を高めることは、地域への貢献などの点で意味があると考え、いろいろな場面でこのワークショップを開催してきました。
ワークショップでは、私がつくった和菓子を子どもたちが複製するのではなく、その時のワークショップのテーマに合わせて、子どもたちが主体性を持って和菓子づくりを体験しました。みんながアーティストになれ、楽しく創作できました。モチーフやイメージに合わせて、自分が感じたように和菓子をつくります。そして完成した作品を確認することで自分の視点を気づくことができます。さらに、子どもたちがつくった作品を並べて鑑賞会を行い、よかった点を褒め合います。五感を刺激する作品づくりを通してこれからも、子どもたちの創作意欲の向上を目指します。
今年のワークショップでも、場所や季節に合わせた企画を考え、桜の時期には桜をモチーフに桜の和菓子を作ってみましたし、こどもの日の頃には、初めにこいのぼりの絵を描き、その絵を和菓子で表現してみるワークショップも行いました。色を選んで和菓子をつくったり、自分の顔を絵に描いてそれを和菓子にするというワークショップも行いました。また、アップサイクルを行っている店舗と一緒に、リサイクルの際に出た不用な皿から好きなものを選んで、その柄にあった和菓子をつくるということも行いました。
「わがしあそび」のなかで子どもらしく遊ぶことで、遊びが楽しいという感情につながり、創作活動を通して自己表現したり、共感しあったりする、そういう場所を私はつくっていきたいと考えています。
ameagua 代表 長谷川 由香里氏
2012年に、無店舗の花屋を開業しました。造花の花屋として開業しましたが、コロナをきっかけに生花の注文が増加し、今ではほぼ生花だけを扱っています。開業前にも副業で花屋をやっていましたが、そのころから「生まれてからの一生を花で彩る」を念頭に仕事をしていました。
地域の課題として、南砺市の企業に若い良い人材が来てくれないことがあります。そしてその理由として、南砺市の企業の魅力が伝わっていないのではないか、と懸念がありました。企業が従業員を採用する際にはコストがかなりかかっていて、さらに中途退社されると損失が大きくなります。そこで、従業員が企業に定着してくれる仕組みが必要だと考えました。
私にできることは何だろうか、福利厚生に花を使うことはできないか、と考えて調べたところ、花を使った定着成功事例が見つかりました。新入社員の両親の誕生日に花を贈ったところ離職率が下がった、会社の若手社長が従業員の誕生日に花を贈り始めたところ業績が伸びた、などの事例です。ameaguaでも、従業員が喜んでくれてもっと早くからすればよかった、離職が減った、従業員が増えてきた、などの声を聞いています。
さらに、南砺市から全国に花を贈ることができ、客層の広がりも期待できます。従業員向けの花ギフトは大阪方面まで、個人的な花ギフト全国から受注できています。
自社の課題としては、花の業界では季節や行事などの時期によって、花の需要に大きく差が出ます。そのため安定した受注が難しく、企業の花ギフトが多く受注できたら、花の需要が安定的になると考えられます。花ギフトの販路開拓のために、南砺市内の企業にチラシを配付することと合わせて、福利厚生に詳しい人を集めてチームを作り、企業をサポートする体制づくりも考えています。
昨年度の塾の発表では、もっと多くの契約を得ると目標を掲げましたが、今のところ2社の増加となりました。しかしこの2社は想定した企業よりもかなり大きな企業でした。その契約ができたのは、私がずっと、花ギフトによる福利厚生を言い続けていたからだと思います。
福利厚生のチーム作りについては、自分の想定している企業の経営者は今何を悩んでいるのか、からスタートしました。経営者に話を聞きまくった結果、悩んでいる分野がわかりました。そこで、それぞれの分野に詳しい専門家とチームを作り始めています。また悩んでいる一つの分野である健康経営申請代行・継続支援は、自社でできるようになりました。継続支援では、花ギフトだけではだめで、新しい福利厚生メニューを作る必要があり、それを担ってくれる仲間もできてきました。これからも顧客の課題を解決できるようにさまざまな人と連携してバックアップ体制を作っていきたいと考えています。