3日目(講義) なんと未来創造塾

なんと未来創造塾

3日目を開催しました

 3日目の塾は、熊本県内の塾が熊本城ホール大会議室に集まり合同講義が行われ、たなべ、こまつ、なんとの各塾がオンラインで参加しました。
 この日は、地域活性化論③「人口減少から生じる地域課題 小さな拠点が地域を変える ~人が集まるしくみづくり~」と題して、以下のように講義いただきました。

・「人口減少から生じる地域課題」
  熊本大学 副学長・教授 金岡 省吾氏

・「小さな拠点は地域を変える?」
  熊本大学 副学長・教授 金岡 省吾氏

・「田辺市の事例」
  熊本大学熊本創生推進機構 客員准教授 鍋屋 安則氏

・「人と人が繋がり、新しいことが生まれる拠点づくり ~東彼杵の事例から~」
  (一社)東彼杵ひとこともの公社 代表理事 森 一峻氏
 

「人口減少から生じる地域課題」

 熊本大学 副学長・熊本創生推進機構教授 金岡 省吾氏

 今日は人口減少によって地域で何が起こるのか、について話します。今日の合同塾に参加している塾のある、熊本、和歌山、石川、富山の各県はどこも人口が増えそうにありません。
 人口増減の要因は、自然増減(出生数と死亡数の差)と社会増減(転入数と転出数の差)です。社会増減を理解するには、「年齢階級別純移動数の時系列分析」のグラフがわかりやすいのですが、これを見ると、進学や就職の段階で転出し、大学等を卒業後に地域に転入する人がいて、その後結婚や子育てを機に転出する、というような地域が多くあります。
 地域から出て行った若者が戻ってこない、という状況に対して、これまでの塾の取り組みによって工務店や建材店、農家、料理屋を営む修了生(ローカルイノベーター)が地域で働く魅力を発信してくれたと考えています。前回の講義では高垣工務店の事例を紹介しましたが、地域の中での会社の存在意義とは何なのだろうか、ということを考えて実践することで、若い人たちがこの会社で働きたいと考えるようになった事例もあります。地域のニーズを捉え、地域で愛されるような取り組みを行うことで、地元の高校生が面白いと言ってくれるようになったりします。あとでお話しいただく東彼杵の森さんの事例も参考になると思います。
 JR九州のドリームステーションという取り組みでは、駅にある遊休スペース等を、”にぎわいパートナー”(一般事業者)に活用してもらい、新規事業への挑戦や既存事業の拡大を通して、地域の課題解決に取り組み、継続的なにぎわいづくりを目指しています。
 日本商工会議所の産業・地域共創専門委員会では、社会環境の変化に柔軟に対応し、地域課題を解決する第二創業スタートアップ支援も考えています。
 各地域の人口減少についてですが、全国的に加速しています。人口が減ると何が起こるのでしょうか。九州については、博多周辺と新たに半導体工場ができる熊本県菊陽町周辺で人口増が見られる反面、他の地域では人口減が著しいのが現状です。田辺市、南砺市でも人口減少が著しく、小松あたりも減りそうですね。
 人口減少や少子高齢化から生じる課題を解決するための事例として、田辺市に秋津野ガルテンという施設があります。ここは廃校となった小学校を地域が市から買い取り、リノベーションして地域課題に取り組むための交流施設にしました。静岡県浜松市の道の駅「夢未来くんま」では、デイサービスを始めました。

<塾生からの感想など>
・バスがなくなって通学できない、保育園、お店、小学校も統合、部活動が成立しない、大学が閉校、老人が多すぎて病院の待ち時間が長い、などの課題が生じている。
・病院が減り遠くなる、学校まで遠くなり保護者の送迎負担が大きくなる、企業も働き手が確保しにくくなるなどの課題が生じている。しかし、すべてにおいて完璧な地域はないので、デメリットを補える暮らし方を実践しているロールモデルを示すことで地域で希望を持つことができるようになる。

 

「小さな拠点は地域を変える?」

 熊本大学 副学長・熊本創生推進機構教授 金岡 省吾氏

 地域では、日用品を扱う店やガソリンスタンドがなくなったり、バスが減ったりしています。都市部の商店街でも同じようなことが起こっています。国土交通省が出しているサービス施設の存在確率と自治体の人口規模の関係を示す図を見ると、それぞれの自治体でどのようなサービスが困難になるかがわかります。
 なくなる日常サービスを地域で運営していくという動きがしだいに活発になってきています。ボランティアでなくビジネスにすることで持続可能なものとなり、住みやすい地域を継続することで人口減少を緩和することができます。
 小さな拠点として、閉店したガソリンスタンドなどを活用して産直コーナーや憩いのコーナー、サロンの機能を備えた売店をつくったりすることで、さらに大企業も入り込んでくるという事例が出てきています。あるいは、産直などの収益事業を行っている地域企業がデイサービスなどを提供することで地域の活性化に取り組んでいる事例もあります。
 地域課題にはさまざまありますが、すぐに儲かるという課題は
なかなか見つかりません。しかし、地域課題に取り組むことで、皆さんのビジネスに生き残る強みが出てくるということです。大手企業なども地域課題に参画してきています。とくし丸、チョイソコなどのサービスもどんどんできてきています。

<塾生からの感想など>
・小さなことから始める、今あるもの・得意なものから出発して変わるきっかけを見つけ出し、それを継続することでコミュニティを作り、みんなで考えることが大切だと思った。
・コミュニケーションが大切。小さいことからでいいのだと確認した。近くの人とのつながりを大切にしよう、横のつながりを強めていきたい。一歩踏み出してやってみることが大切。
・地域のコミュニティを大切にしていきたい。共助に可能性あり。
・客層が地元ではなく地域外が多い。どのようにコミュニティ化していくか、ちょっと非日常を楽しみたい地域外の客層、地域をどの範囲で捉えるかを考えていきたい。

 

「田辺市の事例」

 熊本大学熊本創生推進機構 客員准教授 鍋屋 安則氏

 田辺の事例として、初山さんという魚屋さんの取り組みを紹介します。地域の課題としては、買い物する場所がない、気軽に行ける場所がない、などがあります。また、初山さんとしては、所有するテナント物件が空き物件になっている、ということが課題でした。
 買い物ができなくなった高齢者に総菜などを配達したりしていましたが、田辺の塾では、作った総菜を使って隣に居酒屋を作るという提案をしました。人が集まってにぎわいが生まれる小さな拠点を目指したのです。
 そこに4期生のブドウ農家が、売り場を求めて軒先を借りてブドウを売り始めました。次第ににぎわいができ、テナントも埋まってきて、多くの客が訪れる場所に成長しました。小さいことから始めて少しずつ成長する、という考え方が大切です。ブドウ屋さんも、軒先から軽トラ市、さらにはプレハブの店舗を構えるまでになりました。
 人が集まる居場所をつくることが、地域が生き残ることにつながるようです。

<塾生からの感想など>
・小さなことから始める、今あるもの・得意なものから出発して変わるきっかけを見つけ出し、それを継続することでコミュニティを作り、みんなで考えることが大切だと思った。
・コミュニケーションが大切。小さいことからでいいのだと確認した。近くの人とのつながりを大切にしよう、横のつながりを強めていきたい。一歩踏み出してやってみることが大切。
・地域のコミュニティを大切にしていきたい。共助に可能性あり。
・客層が地元ではなく地域外が多い。どのようにコミュニティ化していくか、ちょっと非日常を楽しみたい地域外の客層、地域をどの範囲で捉えるかを考えていきたい。

 


「人と人が繋がり、新しいことが生まれる拠点づくり ~東彼杵の事例から~」

 (一社)東彼杵ひとこともの公社 代表理事 森 一峻氏

 長崎県東彼杵町は人口7400人と少なく、先ほどまで紹介されてきたさまざまな課題に直面しています。私たちは東彼杵で、fan℃という勝手な基本概念を元にいろんな物事を進めています。現在は、古い米倉庫をリノベーションした場所で取り組みをしており、今は「uminoわ」という新しい拠点もできました。いろいろな地域の企業に入っていただいています。
 私の家業は酒屋でして、父の代でコンビニになったのですが、それもなくなりそうになり、家業がなくなりそうになったところから地域の取り組みを始めました。米倉庫が解体されるという話が出たのと、コンビニがつぶれそうになったのがどちらも2013年で、米倉庫は、当時は解体することになっていました。今は地域のハブとなっていて、コーヒー屋さん、惣菜店、フリースペースなどが入っていて、まちづくり景観資産になも指定されています。近くのJR九州の千綿駅にはドリームステーションの一環として花屋さんが入っています。
 米倉庫は、数人で割り勘で維持費を負担してやっているうちに興味を持った人が集まってきて、できることがしだいに増えました。なるべく横串をささずにふわっとやっています。マストではなくウォントの状態にするにはどうするかを考えながら、拠点づくりをしました。どうやったら継続性を保てるか、ということについて、皆さんはどう考えますか?

<塾生の考え>
・収益がある、思いが同じ仲間がいる、その場所が好き。
・お客さんのニーズに合わせていく。


 米倉庫は、集める、よりも、集まる、をコンセプトにしました。そして店舗に入ってもらってそれからまちに出て行ってもらうという、事業をテストする場としてソリッソ・リソをスタートさせました。
 米倉庫は最初はゴミ屋敷のような状態でしたが、お金もないのでみんなで割り勘でイベント的に片付けして掃除して、イベントを開催したり写真館をしたりしながら地域の人たちに来てもらって、一緒にワークショップをしながら飾ったりしました。
 そのうちコーヒー屋さんや古着アンティーク屋さん、革製品職人さんが入ってくれてスタートしました。この倉庫を借りるときに、地域には、5年で5店舗集めますというKPIを出しました。実際には5年で20店舗ほどに増えました。
 地域の特産品としてお茶がありましたが、有名ではありませんでした。そこで、米倉庫でお茶に関するミーティングを始めてお茶のブランディングを始めたところ、新しい会社ができて抹茶工場がつくられました。まずはコミュニティをつくることで、いろいろなことが走り出すようです。また、お花屋さんが入っている千綿駅は海のそばにあるので、SNSで発信したところすごい反応があって、観光客も来てゲストハウスができて、など、さまざまな動きが始まっています。
 倉庫を借り始めたころは、周囲からは厳しい声がありましたが、何とか乗り越えることができたのは、自分がしたいことをやっていた、ということだと思います。皆さんの、自分のしたいことと地域の課題の接点は何でしょうか。

<塾生の考え>
・阿蘇の草千里でロケーション撮影する際に、許可を取らずに立ち入り禁止の場所に入ったりするカメラマンが多いが、どこに許可をもらったらよいかもわかりにくい。そのような状況を解決するコミュニティをつくってみたい。
・課題を課題だと思っていない人が多い。地域の人に喜んでもらえるビジネスにするには、利用したい、と思ってもらえる要素を組み合わせていく必要がある。


 私たちは、最初の2015年から2020年までは地域から非常に厳しいご意見をいただいていて、若者が動き出すといろいろ厳しいのですが、2020年にコロナが発生しました。くじらの髭のウェブサイトをオープンさせたのもちょうど2020年1月でした。私は写真やデザインも好きだったので、たまたま作っていたこの編集サイトを、コロナ禍でも個人的に話をするのならよいかと考え、地域の人を取材しまくり掲載しました。例えば料理屋さんから、お客さんが来なくなって本当に困っているので取材してくれないかという依頼もありました。取材をしてみると、あまり知られていない話が引き出せたりもしました。反響も大きくて、今もずっとやり続けています。

<質疑応答>
Q このビジネスの中心は何ですか?
A くじらの髭のような、人の話を聞き出して紹介するウェブシステムです。それを販売したり、研修やワークショップを行ったりしています。他にもいろいろあります。

Q ひとりひとりの物語を文章化するのはとても大事だと思いますが、取材の際に心がけていることを教えてください。
A その人の生まれた時からの話を最初に振っていくと、意外にずっと自分で喋っていただけます。私から質問しなくても最初に、どんなところで生まれて何歳ぐらいでどういう風になられたんですか?みたいなことをただ聞いていくことからスタートさせると、後半になってくるとほとんど自分一人で喋っていらっしゃるという状態になるので、取材がスムーズになります。もちろん、聞きたいポイントは押さえていますが。

Q 米倉庫での最初のワークショップなどでどうやって人を集めたのか、あるいは、初めのメンバーからどうやってコミュニティが広がっていったのか、教えてください。
A 最初の米倉庫のメンバーは、全員自分の知り合いでした。その後は地味に関係者が増えていって、小さな商いを結びつけることを意識して活動しました。

 


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