2日目の塾にも、熊本大学から金岡先生にお越しいただき、地域活性化論②「人口減少のメカニズムと地方創生」と題して講演いただきました。
熊本大学 副学長・熊本創生推進機構教授 金岡 省吾氏
今の日本が抱える地域課題は、人口減少に起因するものがほとんどです。第1次産業の衰退、高齢化、子育ての困難、限界集落の発生などさまざまな地域課題が、人口が減少した結果として起こっているのです。
地方創生が叫ばれるようになったのは、平成26年の日本創生会議・人口減少問題検討分科会による消滅可能性の指摘が転機です。地方の人口減少の要因は東京一極集中にもあり、さらに東京では合計特殊出生率も最低です。人口戦略会議は今年、2050年までに若年女性が半減する市町村(消滅可能性自治体)が744あるとしました。
地方創生は、活力ある地域社会の実現に向けて、人口減少を緩和する、外から稼ぎ地域内経済循環を実現する、人口減少に適応した地域づくりを行うことです。今までの人口が増える社会での取り組みとは違う取り組みが必要になります。歩きたくなるまちなかづくり、公園の再生などによる新たなコミュニティづくりに、多くの企業が関心を持っています。
RESAS(地域経済分析システム)を使って出した、南砺市の年齢階級別純移動数の時系列分析のグラフを見てみましょう。進学や就職の時期に人口が流出しています。大学などを卒業した後、南砺市に戻る人もいますが、流出した人口に比べてとても少なくなっています。また、子育ての時期にも人口が流出しています。これらが南砺市の大きな社会減を引き起こしています。
大学進学という視点で見ると、富山県からの進学先は、1970年代は40%近くが東京で、石川、富山は10%強でした。最近では、東京が10%強で、富山、石川が20%程度と、石川が選ばれるようになってきました。富山県内には大学が少なく、進学時に富山県から出る人がどうしても多くなります。
各グループから、
・南砺市で暮らすことのベネフィットを明確にする(わかりやすいメリットを示す)
・南砺市に戻っても安心して自己実現できる状況を作り上げる
・南砺市にUターンする ≠ 実家に入る という考え方も大切だ
・大企業がなくても、中小企業が力を合わせて地域づくりができるのではないか
・やりがいのあるカッコいい仕事のある地域にしたい
等の意見が出ました。
人口減少を歯止めできた地域があります。千葉県の流山市は子育て支援に力を入れて市のイメージアップを図ったり、長野県下條村では村内の土木作業を村民で担うことで予算を捻出して特色ある若者定住促進住宅の建設を行ったりして、人口の流入を図りました。富山県の舟橋村も人口増に成功した事例です。
また、積水ハウスでは、子育て支援を目的としたコミュニティ賃貸住宅という手法で売り上げを伸ばしました。地方創生は、人口減少の克服にコミットする新たな地域づくりなのです。
たなべ未来創造塾の修了生、石山さんの例を紹介します。彼は高垣工務店に大工として就職し、いったん退職するもその後再入社しました。その直後に社長が病気になり、会社を率いていくことになりました。高齢顧客の声を聞き機能訓練専門のデイサービスを始めたり、障害のある子どもの保護者の声を聞き児童発達支援・放課後等デイサービスを始めたりしました。
そして、塾に参加して地域の課題を考え、工務店の中にみんなが集える「知理混場(シリコンbar)」を作り、会場費無料で地域のイベント支援を行いました。その結果、理由ははっきりしないものの、売り上げが上がり、さらに、ここで働きたいという若者が都市部からやってくるということが起こりました。高垣工務店は、地域から必要とされる企業は人口減少社会で生き残ることができ、人口減少に適応した地域づくりの一翼を担える、という事例となりました。
講義の後半をふりかえって、各グループから、
・地域は課題だらけ(ブルーオーシャン)
・若い人の新しい挑戦を支える南砺市にしたい
・目的を共有できるコミュニティづくりが必要だ
・面白い人が面白い人を集める
・顧客の課題解決に取り組んでみる
・南砺市にいる人がまず幸せになる
などの意見が出ました。